ヒートマップのデータ分析方法

記事の内容
ヒートマップツールでデータを収集した後は、その結果を適切に読み解き具体的な改善アクションにつなげることが重要です。本記事では、ヒートマップデータの基本的な読み取り方から、直帰率・滞在時間・コンバージョン率とヒートマップの関係、さらにクリックデータやスクロールデータそれぞれの分析ポイントと改善策について解説します。最後に、分析結果を活かした具体的な活用事例も紹介します。
ヒートマップデータを読み解く基本
ヒートマップを分析する際は、まず自社サイトの目的(KPI)とユーザーに期待する行動を明確にした上で、その理想と現実のギャップをヒートマップ上で探すことから始めます。基本的な読み解きのステップは以下のとおりです。
- 全体傾向の把握: ヒートマップ全体を眺めて、どの部分が一番赤く、どの部分が青いかを確認します。これはユーザーの関心や行動の強弱を俯瞰する作業です。例えば「ページ冒頭は赤いが、中盤から青くなっている」「右サイドバーは全体的に青い」など、大まかな傾向を掴みます。
- 注目点の特定: 次に、自社サイトでユーザーに注目してほしい重要ポイントがちゃんと見られているかを確認します。たとえば主要な見出しや製品の特徴、CTAボタンなどが赤くなっているかどうかです。重要ポイントが青いままなら、大半のユーザーにスルーされている恐れがあります。
- 異常値の発見: 全体傾向から外れて不自然な色の分布がないか探します。具体的には、「本来クリックできない箇所が赤くなっていないか」「本文よりも目立つ場所が他にないか」「ユーザーの流れが途中で途切れていないか(急激に青になる場所はないか)」といった点です。不自然な点はそのまま課題を示唆している可能性があります。
- ユーザー行動との照らし合わせ: ヒートマップ単体の色分布だけでなく、他のユーザー行動データ(Googleアナリティクスの指標やコンバージョンデータ)とも付き合わせます。例えば、あるページの直帰率が高い場合にヒートマップを見ると「冒頭ですぐ離脱している」ことが視覚的に確認できるかもしれません。また、コンバージョンしているユーザーのみに絞ってヒートマップを再生成できるツールであれば、コンバージョンユーザーの行動パターンと非コンバージョンユーザーの行動パターンの差分を比較するといった分析も可能です(セグメント分析機能があるツールの場合)。
- 仮説立て: 以上を踏まえて「なぜそのような行動が生じているのか」を考えます。例えば「●●の情報が不足しているからユーザーは画像を繰り返しクリックしたのではないか」「フォーム手前で離脱が多いのはフォームが長すぎて敬遠されたのではないか」等、行動の裏にあるユーザー心理を推測します。この際、前述の注意点に留意しながら、複数の仮説を検討することが大切です。
- 改善策の検討: 仮説に基づき、解決するための施策アイデアを出します。例えば、クリックされていないボタンがあればデザインを変えてみる、読まれていないセクションは内容を入れ替える、興味を持たれた箇所に関連情報へのリンクを追加する、など具体的な改善策を洗い出します。
このようなプロセスでヒートマップデータを読み解くことで、単なる「色の地図」を明確な改善アクションプランへと落とし込むことができます。次章以降では、特に重要な指標である直帰率・滞在時間・コンバージョン率とヒートマップ結果の関係、およびクリックデータ・スクロールデータの詳細な分析方法について掘り下げます。

直帰率・滞在時間・コンバージョン率との関係
ヒートマップ分析と切り離せないのが、サイト全体の直帰率・滞在時間・コンバージョン率といった主要KPIとの関係性です。これらの指標は従来からWebサイト評価に使われてきましたが、ヒートマップと組み合わせることで原因と結果の因果関係をより深く理解できます。
- 直帰率とヒートマップ: 直帰率(Landingページを見て他のページに行かず離脱したユーザーの割合)が高い場合、そのページでユーザーが満足できなかったか入口の期待と内容が合致しなかった可能性があります。ヒートマップを見ると、直帰率の高いページでは多くの場合ファーストビュー付近ですでに青色(離脱)になっていることが確認できます。つまりユーザーはページ冒頭を少し見ただけで離脱してしまったことが分かります。この場合、ファーストビューで伝えるメッセージが弱い、ページの表示速度が遅くて離脱された、デザインが一見して魅力的でない等の仮説が立てられます。逆に直帰率が低い(他のページにも遷移している)場合は、ヒートマップ上でコンテンツを最後までしっかり読んだうえで内部リンクをクリックして次のページに進んだ跡が赤く残っている、という理想的な状態が見て取れるでしょう。直帰率という数量的な結果に対し、ヒートマップはその質的な理由を教えてくれるのです。
- 滞在時間とヒートマップ: 平均滞在時間(ページに留まった平均時間)が短い場合、ヒートマップのアテンション解析で全体的に青や緑が多いことが考えられます。ユーザーがページ内容にあまり興味を示さず、ざっと流し読みしてすぐ退出した状況です。一方、滞在時間が長い場合はヒートマップ上で赤い熟読エリアが点在し、ユーザーがじっくりページを読んでいたことが分かるでしょう。ただし滞在時間が長ければ必ずしも良いとは限りません。長いのにコンバージョンしないケースでは、ユーザーが迷って時間を費やした可能性もあります。その判断にもヒートマップが役立ちます。例えば熟読エリアは赤いがクリックエリアが全く発生していない場合、「読んだけれど行動しなかった(興味は引けたが次のステップに進ませられなかった)」ことが示唆されます。このように滞在時間という指標もヒートマップと併せることで、より意味のある解釈ができるようになります。
- コンバージョン率(CVR)とヒートマップ: コンバージョン率は最終成果の指標ですが、ヒートマップを見ることで「なぜそのCVRになっているのか」を分析できます。CVRが低迷しているページでは、ヒートマップ上でCTAボタンが青かったり、フォームまでスクロールされていなかったりといった問題が見つかるでしょう。一方、CVRが高いページではユーザーの動線がスムーズで、クリックヒートマップでCTAが真っ赤、スクロールも最後まで到達といった理想形が確認できます。ヒートマップ分析は、CVRを改善する具体策(CTAの改善、導線配置の最適化など)をデータに基づいて導き出す手助けをします。クリックエリアを分析することでユーザーが興味を持った要素や誤ってクリックした箇所が分かり、それらを手掛かりに情報追加やデザイン変更を行えばCVR向上につなげられるのです。
このように、直帰率・滞在時間・CVRといった指標はヒートマップと組み合わせることで初めて活きた分析結果となります。定量データ(率や秒数)と定性データ(ヒートマップの色)を突き合わせ、「どの指標の数値がなぜそうなっているのか」を深掘りしていきましょう。

クリックデータの分析と改善ポイント
クリックヒートマップから得られたデータをもとに、具体的にどのような分析を行い、改善に結びつけるかを解説します。
1. 重要なクリック箇所の確認: まず、コンバージョンに直結するクリック箇所(CTAボタン、主要リンクなど)がしっかりクリックされているかを確認します。ヒートマップ上でそれらが赤や黄色になっていれば問題ありませんが、緑や青の場合は想定よりクリックされていません。例えば「資料請求ボタン」が青い場合、ユーザーはボタンに気づいていないか、魅力を感じていない可能性があります。この場合、ボタンの色やサイズを変更して目立たせる、コピー文言を見直す、ページ内で複数配置する、といった対策を検討します。
2. 意図しないクリックの検出: 前述のとおり、クリックヒートマップでは本来クリックできない要素がクリックされた跡も分かります。例えば背景の装飾画像や無効なリンク箇所が赤くなっていた場合、それらはユーザーにとって紛らわしいUIと言えます。改善策としては、誤クリックされている画像にリンクを設定してユーザーの期待に応える、あるいはデザインを変更してクリックできないと認識できるようにすることが考えられます。実例では「画像をクリックすると詳細が見られると思った」というユーザー行動に合わせて、その画像自体を拡大表示や商品ページへのリンクに変更したことでユーザー体験が向上しCVRが上がったケースがあります。
3. クリック分布の最適化: ユーザーが集中してクリックしている箇所と全くクリックしていない箇所を比較することで、ページ内の情報設計を見直すことができます。例えば、ページ上部のナビゲーションで「製品情報」のリンクばかり赤く、「価格」や「導入事例」が青い場合、ユーザーはまず製品情報を求めていることが分かります。この場合、ナビゲーションメニューの順序を見直し、ユーザー関心の高い項目を前面に出すといった対応が有効でしょう。また、逆に重要にも関わらず青いメニュー項目があれば、そのコンテンツ内容や名前をユーザーにとって魅力的なものに変更することを検討します。
4. フォーム内クリックの分析: 単一ページ内にフォームがある場合、フォームのフィールドへのクリック状況もヒートマップで把握できます。例えば最初の入力ボックスはクリックされているのに2番目以降が全くクリックされていない場合、1項目入力した時点で離脱されたことが推測できます。このとき、フォームが長すぎたり不要な項目が多い可能性があります。そこでフォーム項目を削減したり、ステップを分けて段階的に入力させる工夫をする、といった改善策が考えられます。クリックの途切れ=ユーザー離脱ポイントと捉え、フォームやUIフローの最適化につなげます。
5. クリックデータのセグメント分析: 可能であれば、新規ユーザーとリピーター、PCとモバイルなどセグメント別にクリックヒートマップを比較するとさらなる発見があります。例えば、PCではクリックされているがモバイルではタップされていないボタンがあれば、モバイル画面で配置が見えていないなどの問題が浮き彫りになります。セグメント分析に対応したツールではない場合も、主要デバイスごとに別途ヒートマップを確認するなどして、ユーザー層別の行動の違いを把握しましょう。
以上のような分析を経て、クリックデータから「ユーザーが何を欲し、どこで迷っているのか」を読み解きます。その上でボタンデザインや配置変更、不要要素の削除、リンク導線の追加など具体的なUI改善策を講じることで、コンバージョン率向上やユーザビリティ改善につなげることができます。
スクロールデータの分析と改善ポイント
次に、スクロールヒートマップから得られたデータの分析方法と、それに基づく改善ポイントを解説します。
1. 平均到達度の確認: まずページ全体の平均到達度(ユーザーがどこまでスクロールしたか)を把握します。多くのヒートマップツールでは、ページ内の特定地点に到達したユーザーの割合が数値でも表示されるため、「ページ50%の位置で到達率40%」といった具合に確認できます。これはいわゆるファーストビュー以降、何割のユーザーがスクロールしたかを示す指標です。一般に到達率が著しく下がるポイントがあれば、そこがコンテンツ上の境目になっている可能性があります。例えば、グラフや表などリッチコンテンツの直前で離脱が増えるなら、データが難解すぎるのかもしれませんし、逆にすぐ下に「続きを読む」ボタンがあって別ページに誘導しているのかもしれません。
2. 離脱セクションの特定: スクロールヒートマップ上で色が急に冷めている箇所(多くのユーザーが離脱した箇所)を詳しく見ます。そのセクションには何があるか、レイアウトや内容に問題がないかを検証します。例えば、離脱箇所に大きなテキストブロックだけがある場合、文章量に圧倒されて読むのを諦めている可能性があります。その場合、文章を箇条書きにする、重要なキーワードを太字にする、関連画像を入れて読みやすくするなどの対策が有効です。また、離脱箇所に外部リンクが含まれているなら、そのリンク先が本当にユーザーの最終目的地なのか(それとも途中で離脱を誘発しているだけなのか)を考えます。必要であれば外部リンクではなく自社サイト内の案内に変更するなど検討します。
3. スクロール誘導の工夫: スクロールヒートマップで序盤から青くなっている場合、ユーザーがそもそもスクロールしてくれていない状況です。このような場合には、ユーザーにスクロールを促す工夫が必要です。具体的には、ファーストビューに次のセクションの一部が見えるようデザインを工夫する、スクロールを促すアイコン(下矢印など)を配置する、冒頭にページ全体の概要を示して続きを読みたくさせる、といった方法があります。特にランディングページでは、最初の画面でユーザーの興味を引き、「続きを見たい」と思わせることが重要です。スクロール誘導が奏功すれば、ヒートマップ上でも以前青かった箇所が徐々に暖色化してくるでしょう。
4. 重要コンテンツの露出: スクロール解析で多くのユーザーが見ていないことが判明した重要コンテンツは、配置場所を再考します。例えば製品の価格情報がページ末尾にありほとんどのユーザーがそこまで到達していない場合、価格情報をページ中段に織り交ぜる、もしくは冒頭に概要だけ記載して詳細は折りたたみにする、といった対応が考えられます。ヒートマップ分析から「ユーザーに見られていない重要情報」をあぶり出し、それを「見てもらえる場所」へ移すことが大切です。
5. ページ分割や簡略化: どうしても長くならざるを得ないコンテンツの場合、ヒートマップで著しく離脱率の高い箇所があれば、そこでページを分割することも検討します。特に記事ページなどでは、1ページで完結させるよりも前編・後編に分けた方が結果的に読了率が上がるケースもあります。また、同じ内容でも動画やスライドなど形式を変えることでスクロール量を減らせるかもしれません。スクロールヒートマップはページの情報密度や構成を適正化する指針となります。
6. CTAまでの到達率: スクロールヒートマップはCTA(例えば「お問い合わせフォーム」や「購入ボタン」)まで何%のユーザーが到達したかを計測するのにも役立ちます。仮にCTAまでの到達率が10%しかない場合、そのCTAの配置場所を上げるか、中間にもCTAを設置するといった改善が必要です。事例として、あるLPでフォームの到達率を改善する施策を講じた結果、アップセル率が5.8ポイント向上したケースも報告されています。このように、CTAにたどり着く前にユーザーが離脱していないかを常にチェックし、必要ならCTAの露出回数や配置場所を調整しましょう。
以上、スクロールデータの分析では「どこでユーザーはページを見るのをやめたのか」に焦点を当て、その原因を推測した上でコンテンツ配置や誘導方法の改善に取り組みます。クリック分析と組み合わせることで、「離脱ポイントに至る前にユーザーが求めていた情報は何か」「離脱ポイント直前にユーザーはどこをクリックしたのか」まで追えると、より踏み込んだ対策立案が可能です。

具体的な活用事例
最後に、ヒートマップ分析から得た知見を活かしてサイトを改善した具体的な事例をいくつか紹介します。これらは前述の分析ポイントが実践され、成果に結びついたケースです。
- 事例1: フォーム到達率の向上でCVアップ
とあるサービスLPでは、お問い合わせフォームをページ下部に設置していましたが、多くのユーザーがフォームに到達せず離脱していました。スクロールヒートマップでフォーム到達率を測定したところわずか15%程度しかなく、残りの85%は途中離脱していることが判明しました。そこで、中盤と記事末尾の2か所にCTAボタン(クリックでフォームセクションにジャンプする)を追加し、ファーストビューにもフォーム送信を促す短いメッセージとボタンを配置するA/Bテストを実施しました。結果、フォーム到達率が向上し、ランディングページのコンバージョン数が125.1%改善しました。この事例ではヒートマップで課題を定量化し、その改善施策をA/Bテストで検証することで、大幅なCVR改善に成功しています。 - 事例2: 読了率向上によるエンゲージメント改善
あるオウンドメディアの記事ページでは、記事の途中で離脱する読者が多く、最後まで読まれる記事が少ないことが課題でした。アテンションヒートマップを見ると、記事中盤に青い(ほとんど読まれていない)段落があり、そこで多くのユーザーがスクロールを止めていることが分かりました。原因を調べると、その段落は専門用語が多く読みづらい箇所でした。そこで内容を噛み砕いて箇条書きにし直し、関連画像を差し込むリライトを行いました。また、記事後半に向けて興味を繋げられるよう、中盤に「まとめ」の見出しを設けて後半に続くことを示唆しました。改善後、該当記事の熟読エリアが全体的に暖色化し、記事の読了率(最後まで到達したユーザー割合)が以前より20%以上増加しました。結果として読者のサイト滞在時間も延び、関連ページへの遷移率も上がっています。このように、ヒートマップで発見した離脱ポイントを改善することでユーザーのエンゲージメントを高めた例です。 - 事例3: ナビゲーションメニューの改善でPV増加
BtoB企業のコーポレートサイトで、グローバルナビゲーションの一部メニューがほとんどクリックされていないという課題がありました。クリックヒートマップを分析すると、「サービス紹介」は赤くクリックされている一方、「導入事例」や「お客様の声」は青く、ほとんど利用されていないことが可視化されました。そこでナビゲーション項目の順番を入れ替え、「サービス紹介」の次に「導入事例」を配置し、またメニュー名もより具体的な「成功事例」に変更しました。さらに、導入事例ページへの誘導バナーをトップページにも設置しました。これらの改善により、「導入事例(成功事例)」ページへの遷移数が大幅に増加し、それに伴い資料請求などのコンバージョンも増えています。ヒートマップでユーザーの関心が低かったコンテンツへの導線を強化したことでPVとCVの双方が改善したケースです。
これら事例からも分かるように、ヒートマップ分析を用いることで具体的かつ効果的なサイト改善策を講じることが可能です。重要なのは、ヒートマップで終わらせず、必ず他の解析手法やテストと組み合わせて検証し、PDCAを回すことです。ヒートマップが示すユーザーの動きを出発点に、仮説検証を重ねて継続的なサイト改善に取り組みましょう。
関連記事
ヒートマップ活用でWebサイトの成果を最大化しませんか?
ヒートマップを導入し、ユーザーの行動を可視化することで、 コンバージョン率の向上 や UI/UXの最適化 が可能になります。
しかし、「どのツールを選べばいいのか」「データをどう分析すればいいのか」「具体的な改善策は?」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか?
株式会社シンシアでは、貴社のWebサイトに最適なヒートマップ活用方法をご提案し、効果的なデータ分析から施策立案・改善の実行までサポート いたします。
これまで多くの企業様のCVR改善やマーケティング最適化に貢献してきた実績を活かし、成果につながる戦略設計をお手伝いいたします。
ぜひ一度、以下よりお気軽にお問い合わせください。