ヒートマップツールには国内外で様々なサービスが提供されており、機能や料金も多種多様です。自社に最適なツールを選ぶためには、それぞれの特徴を理解し比較検討することが重要です。本記事では、人気のヒートマップツールであるHotjar、Ptengine、UserHeatの特徴を中心に、機能面・料金プランの比較、企業規模別のおすすめ、導入時の注意点を解説します。ヒートマップ導入を検討中の企業マーケターの参考になれば幸いです。
人気ヒートマップツールの特徴
まずは代表的なヒートマップツールであるHotjar、Ptengine、UserHeatについて、それぞれの基本的な特徴を紹介します。
Hotjar(ホットジャー)
Hotjarはヨーロッパ発の世界的に人気のあるヒートマップツールです。クリック・タップ、スクロール、マウスムーブといった基本ヒートマップに加え、セッション録画(レコーディング)やフィードバック調査などUX改善のための総合機能を備えています。フォーム分析やアンケート機能も統合されており、ヒートマップで行動を捉えつつユーザーの声も集められるのが強みです。UIは英語ですが直感的に操作でき、日本からの利用者も多いです。実績として世界180か国、20万社以上に導入されている信頼性の高いサービスです。
Ptengine(ピーティーエンジン)
Ptengineは国内(日本)発のヒートマップツールで、グローバルでも利用されています。クリック、スクロール、アテンション(熟読)、マウスフローなど豊富なヒートマップ機能に加え、リアルタイム解析やカスタムイベント計測などWeb解析ツールとしての側面も持っています。他サービスとの連携も充実しており、例えばOptimizelyとの連携によるA/Bテストや、WordPressプラグインによる簡単導入が可能です。日本語サポートが手厚く、使い方セミナーなども開催されているため、初心者でも安心して利用できます。国産ながら海外ユーザーも多く、インターフェースは多言語対応しています。
UserHeat(ユーザーヒート)
UserHeatは株式会社ユーザーローカルが提供する国産のヒートマップツールで、基本機能が無料で使える点が最大の特徴です。クリック、マウスムーブ、熟読エリア、離脱エリアなど主要な分析パターンをカバーしており、月間30万PVまでなら無料で全機能を利用できます。スクリプトを設置するだけで使える手軽さから、中小規模サイトを中心に広く利用されています。上位版の「User Insight」(有料)は高度な分析やコンサルティング機能を含みますが、簡易なヒートマップ目的であればUserHeat無料版で十分なケースも多いです。スマートフォン対応もしており、モバイルヒートマップも標準提供されています。
Hotjar、Ptengine、UserHeatの機能比較
上記3ツールの主要機能を比較すると以下のようになります。
- 基本的なヒートマップ種類: 3ツールともクリックヒートマップとスクロールヒートマップは標準搭載。HotjarとPtengineはマウスムーブ(アテンション)ヒートマップも備えます。UserHeatも熟読エリア(アテンション)とマウスムーブが利用可能です。
- セッション録画: Hotjarは録画再生機能があり、個々のユーザー行動を動画で確認できます。PtengineとUserHeatには標準では録画機能はありません(Ptengineは上位プランや別サービスで提供あり)。
- フィードバック取得: Hotjarは画面上にフィードバックフォームを出す機能やアンケート作成機能が充実しています。PtengineとUserHeatにはその機能はありません(解析専用)。
- リアルタイム分析: Ptengineはリアルタイムで現在の訪問者数やクリック状況を監視できます。HotjarとUserHeatはリアルタイム分析の概念はなく、データは逐次集計です。
- A/Bテスト連携: PtengineはOptimizelyなどとの連携でA/Bテスト結果をヒートマップで比較することができます。Hotjar自体にはA/Bテスト機能はありませんが、Google Optimize等と組み合わせて利用することが一般的です。UserHeatはA/Bテスト機能はありませんが、別途A/Bテスト実施後に手動で比較分析する形になります。
- データ保存期間: Hotjarはプランによって録画保存件数や日数制限あり。Ptengineもプラン次第で過去データ参照期間が変わります。UserHeat無料版は直近1か月程度のデータが保持されます。長期データ分析したい場合は上位プランやエクスポートを検討する必要があります。
- UI/サポート言語: Hotjarは英語UI(日本語サポートなし)。PtengineとUserHeatは日本語UI・サポートがあります。英語が苦手な場合は国産ツールが安心でしょう。
- 特殊分析: Ptengineはページグループ分析やセグメント別分析など高機能な解析が可能です。HotjarはシンプルなUIで専門分析は少なめ。UserHeatはシンプルで高度なカスタム分析機能はありません。
このように、HotjarはUX総合ツール、Ptengineは高機能Web解析ツール、UserHeatは手軽な無料ツールという色合いがあります。それぞれ自社のニーズに合わせて選択すると良いでしょう。

料金プランの比較
次に料金面での比較です(2025年時点の情報)。各ツールとも無料プランまたは無料枠が用意されています。
- Hotjarの料金: Hotjarは基本無料プランがあり、月6万PVまで無料で利用可能です。無料プランではヒートマップ3件まで、録画300セッション/月など制限があります。ビジネス利用なら有料版が必要で、例えば月29ドル(約¥3,500)で月30万PVまでといったプランがあります。PV上限が上がるほど料金も増加し、大規模サイト向けにはカスタムプランが提供されています。なお、サイト数無制限(PV合計制限)という緩い条件なので、複数サイトを運営する場合はHotjarの方がコストパフォーマンスが良いこともあります。
- Ptengineの料金: Ptengineは月2.5万PVまで無料で使えます。有料版は50,000PV/月までが月額14,800円から始まり、それ以上はPV数に応じて数万円〜といった価格帯です。大企業向けのエンタープライズプランでは数百万PV以上にも対応し、料金は個別見積もりとなります。無料枠がHotjarより少ないですが、日本円で料金が明確なので社内稟議を通しやすい利点があります。
- UserHeatの料金: UserHeatは月30万PVまで完全無料です。無料でここまでのPVをカバーできるツールは他になく、まず試してみたいという場合には最適です。それ以上のPVになる場合や高度な分析が必要な場合は、上位版のUser Insightとなり、これは問い合わせベースの料金(サイト規模により変動)です。大まかな目安としては、100万PV規模で月数万円程度からコンサル付きでもっと高額なプランまであります。
- その他ツールの料金補足: 参考までに、他の国産ツールMierucaヒートマップは月1万PVまで無料、SiTestは小規模向けプランが月3万円程度〜、海外のCrazy Eggは月額9ドル〜(PV制限あり)など、多岐に渡ります。Microsoft Clarityは完全無料で無制限ですが、機能が限定的です。
料金面では、小〜中規模サイトならUserHeat(無料)、中〜大規模でコストを抑えたいならHotjar、詳細分析が必要で費用許容ならPtengineといった棲み分けになります。もちろん機能とのトレードオフもあるので、単純に安さだけでなく、求める価値に対するコストで判断してください。

企業規模別のおすすめツール
企業やサイトの規模・目的に応じて、どのツールが適しているかをまとめます。
- 個人ブロガー・小規模サイト運営者: 予算をかけず手軽に始めたい場合、UserHeatが第一候補です。無料で十分使え、設置も簡単です。もう少し高度な分析も試したいなら、Microsoft Clarity(無料無制限)も合わせて利用すると良いでしょう。海外UIに抵抗がなければHotjar無料版で録画機能だけ使ってみるのも一手です。
- 中小企業・ECサイト運営者: 月間PVが数万〜十数万程度であれば、Hotjarの安価な有料プランかPtengineの入門プランが候補になります。HotjarはUX改善全般に役立つので、サイト改善の体制が整っているなら費用対効果が高いです。日本語サポート重視ならPtengineを選ぶと良いでしょう。また、UserHeat無料版も併用しておけばPV上限超過時のバックアップになります。
- 大企業・高PVサイト運営者: 月間100万PVを超えるようなサイトでは、HotjarかPtengineの上位プラン、あるいはデータ保持を考えてオンプレミス型のツール(例えばContentsquareや自社開発)を検討する段階です。Hotjarは安価ですがPV上限がネックになる場合、Ptengineの大規模プランや、他の国産エンタープライズ向けヒートマップ(SiTestなど)も視野に入ります。専任のWeb解析チームがあるなら、Ptengineの細かな分析機能は強力な武器になるでしょう。
- 複数サイトを統合分析したい場合: Hotjarはサイト数無制限(PV合計制限)なので、グループ会社で複数ドメインのサイトをまとめてトラッキングするのに向いています。Ptengineも複数プロジェクト管理ができますが、課金はサイトごとまたはPV合計で別途条件ありです。UserHeatはサイトごとにスクリプトを入れれば複数管理可能ですが、統合レポートはできません。
- 高度なUXソリューションを求める場合: 単純なヒートマップにとどまらず、ABテストやパーソナライゼーション、さらにはDX(デジタルトランスフォーメーション)支援まで包括したサービスを検討するケースもあるでしょう。その場合、Ptengineの包括サービスやSiTest、海外ではContentsquareやDecibelといった上位ソリューションも検討に値します。ただし費用は高額になりますので、まずは上記3ツールで十分か見極め、それでも不足する場合に検討すると良いでしょう。

導入時の注意点
最後に、ヒートマップツールを導入・運用する際の注意点を挙げます。
- サイト速度への影響: ツールのスクリプトを読み込むことでページ表示が遅くならないか確認しましょう。大抵のツールは非同期読み込みで影響軽微ですが、念のためPageSpeed Insights等でパフォーマンスを計測しておくと安心です。必要に応じて重要ページでは計測コードを外すことも検討します。
- プライバシー対応: ヒートマップはユーザーの行動を追跡するため、プライバシーポリシーへの追記やCookie同意バナーでの告知が必要になる場合があります(特に欧州GDPR対象サイトなど)。また、入力内容が記録されないようマスキング設定がされているか各ツールで確認しましょう。HotjarやPtengineはデフォルトでフォーム内容は記録しないようになっています。
- データの見過ぎに注意: ヒートマップは視覚的に面白いため、つい細部まで気になってしまいます。しかし前提としてサンプル数が十分か、偏ったユーザーの行動ではないかに留意が必要です。過信せず他の指標と合わせて判断することを常に心がけましょう。
- 社内での情報共有: ツールを導入したら、チーム内での共有方法も決めておきます。例えば、毎週分析結果をレポートにまとめて関係者に展開する、重要な発見があればスクリーンショットをSlackで共有する等です。ヒートマップ画像はインパクトがあるので、活用して社内のサイト改善意識を高めることもできます。
- 課金超過の管理: 無料枠を超えそうな場合や、上限PVが近い場合はアラート設定や定期チェックを行いましょう。意図せず大量アクセス(キャンペーンなど)があってオーバーすると追加課金になることがあります。例えばHotjar無料版は上限超過時に自動でデータ収集停止となりますが、Ptengineはプランによっては追加従量課金となる場合があります。
- ツール乗り換えの柔軟性: 最初は無料や安価なツールから始め、後から乗り換えるケースも多いです。その際、過去データ移行はできないので、並行期間を設けて新旧ツール両方で計測し差異がないか確認しつつ切り替えると良いでしょう。
以上を踏まえ、ヒートマップツールを上手に導入・活用してください。自社サイトの規模と目的に合ったツールを選び、データに基づく改善を進めることが成功への近道です。ぜひこの記事を参考に、最適なヒートマップツール選びと運用を実現してください。
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