競合広告戦略分析を実践する上で、広告パフォーマンス指標(KPI)の活用も欠かせません。自社の広告の数値データを競合状況と照らし合わせて分析することで、単なる数字の上下以上に深いインサイトが得られます。ここでは代表的な広告KPIごとに、競合を考慮した活用方法や改善アクションのヒントを紹介します。
インプレッションシェア(表示シェア)
インプレッションシェアとは、特定の広告が表示可能だった回数のうち実際に表示された割合を示す指標です。検索広告では、自社広告がどれだけの機会で表示枠を獲得できたかを示し、裏を返せば競合に表示機会を奪われた度合いも分かります。Google広告のオークション分析やYahoo広告のオークションインサイトで提供されるデータで、競合各社のインプレッションシェアを確認できます。この指標を活用すると、主要な競合が市場内でどれほど露出しているか、自社はどの程度存在感を出せている。が数値で把握できます。
インプレッションシェアの分析から得られる示唆として、例えば特定の競合Xのシェアが非常に高いキーワードが見つかった場合、それは競合Xがその領域に力を入れていることを意味します。そのまま正面から同じキーワードで戦おうとすると、クリック単価の高騰や広告ランクで不利になる可能性があります。実際、狙いたいキーワードでも競合のシェア・掲載順位が高すぎる場合、単に同じ土俵で出稿すると入札競争によってCPCが上がり、結果として顧客獲得単価(CPA)の悪化を招きかねません。このような場合の対策としては、別の関連キーワードへシフトしたり、広告の品質スコア向上で入札以外の面から競争力を上げる、といった手が考えられます。また、敢えて競合が予算投下しているキーワードを外す判断も一つです。インプレッションシェアはその判断材料として有効に機能します。
逆に、自社のインプレッションシェアが低く抑えられている領域はチャンスとも言えます。予算や入札戦略を調整し、シェア拡大を図ることで競合から市場シェアを奪える可能性があります。Google広告には「目標インプレッションシェア」という自動入札戦略も用意されており、特定の掲載位置で一定以上のシェア獲得を目指すことも可能です。いずれにせよ、インプレッションシェアを定期的にチェックしながら競合とのシェア争い状況をモニタリングすることが、効果的な広告配分の意思決定につながります。

クリック率(CTR)と広告の魅力度
クリック率(CTR)は広告表示に対してクリックされた割合で、広告の魅力度や関連性を測る代表的な指標です。競合の存在を意識するなら、自社広告のCTRを評価する際には競合広告の影響を考慮しましょう。例えば、自社のCTRがあるキーワードで低迷している場合、単に自社広告の出来が悪いだけでなく、隣に表示されている競合広告が非常に魅力的でユーザーを取られている可能性があります。競合の広告文や表示リンク先がユーザーのニーズにマッチしていたり、有名ブランドで信頼感があるためクリックを集めているケースです。
こうした場合、改善策としては自社広告のタイトルや説明文をより魅力的に磨き上げるのはもちろん、競合にはない独自の強みを前面に押し出すことが重要です。例えば「地域No.1の実績」や「〇〇専門店ならではの強み」など、競合と差別化できる要素をヘッドラインに含めてユーザーの目を引く工夫をします。実際に、インプレッションシェアの大きい強力な競合の広告文やLPを分析し、自社との違いを洗い出すことで差別化ポイントや改善点が見えてきます。競合が強いほど、単に露出を増やすだけでなく内容面で競合を上回る工夫がCTR向上には欠かせません。
また、CTRは品質スコアにも影響するため、競合に負けないCTRを確保できれば結果的に広告ランク向上やCPC低減にもつながります。他社に埋もれてクリックされない状態を放置せず、競合比較の視点で広告文・クリエイティブをPDCA改善していきましょう。なお、ディスプレイ広告やSNS広告ではCTRだけで広告効果を判断しにくい部分もありますが、同ジャンルの平均CTRや主要競合の推定CTR(参考値として業界ベンチマークを公開している資料もあります)と比較し、自社の位置を把握すると良いでしょう。
コンバージョン率(CVR)とランディングページ
コンバージョン率(CVR)は広告経由でサイト訪問したユーザーのうち、問い合わせや購入など所定の成果に至った割合です。CVRの高低にはLPの内容や使いやすさ、オファーの魅力など様々な要因が影響しますが、競合分析の観点から特に注目すべきは競合とのオファー比較とユーザー体験の優劣です。
競合他社と自社で類似の商品・サービスを提供している場合、ユーザーは複数サイトを比較検討してからどこでコンバージョンするか決めます。このとき競合サイトの方が価格や条件で勝っていれば、自社サイトで一度離脱し競合側で成約してしまうでしょう。逆に自社にしかないメリット(例:アフターサポート充実、地元密着で安心など)をしっかり訴求できればユーザーは競合ではなく自社を選ぶ可能性が上がります。競合のLPを実際に訪問して内容・導線を分析することは、CVR改善のヒントになります。特に競合がどんな強みを押し出し、どんなUI/UX上の工夫をしているかを知ることで、自社LPに足りない要素が見えてきます。例えば、競合にあって自社にないものが「利用者の声(口コミ)」であればLPに追加を検討する、「問い合わせフォームの入力項目が競合は少なく簡潔」であれば自社も短縮を試す、といった具合です。
また、コンバージョン率は直接は比較しにくい指標ですが、外部ツールで推測することも可能です。前述のSimilarWebなどでは競合サイトの訪問あたりページビュー数や滞在時間が参考値として得られることがあります。これらは間接的にユーザーのエンゲージメントやサイト上での回遊度合いを示し、CVRと相関する指標です。例えば競合サイトAは平均滞在時間が自社サイトの倍あり、直帰率も低いとすれば、A社のコンテンツやUXが優れておりコンバージョン率も高い可能性があります。そうした場合は自社サイトの改善余地(情報量や使い勝手の向上など)を探るきっかけになります。
競合と自社のCVR差を埋めるためには、地道なLP改善の積み重ねが重要です。他社の良い点は積極的に取り入れ、自社ならではの強みは一層強調して、ユーザーに「このサイトで申し込むのがベストだ」と思ってもらえる体験を提供しましょう。コンバージョン率が上がれば、同じ広告費でも成果が増えるためROIが向上し、結果的に競合との広告競争にも有利に立てます。

顧客獲得単価(CPA)・ROI
顧客獲得単価(CPA)やROI/ROAS(投下費用に対する成果や売上の割合)は、最終的に広告施策の費用対効果を判断する指標です。競合の動きを踏まえてこれらを分析することで、どのような戦略がより儲かる(または損を防げる)か見極めやすくなります。
例えば、競合が激しく入札競争を仕掛けてくるキーワードではCPAが上がりやすく赤字になりかねないため、前述のように一時撤退や予算縮小も選択肢になります。逆に競合があまり注力していないニッチキーワードや新興チャネルであれば、低CPAで成果を獲得でき投資効率が良いでしょう。実際に競合分析を経て広告予算配分を見直し、限られた予算で効率よくターゲットにリーチできるようになった結果、CPAを大幅に改善できたケースもあります。競合の予算配分や施策傾向をヒントに、自社の広告投資を最適化することがポイントです。
ROIの観点では、競合が提供している付加サービスや価格帯も影響します。たとえば競合が値引きキャンペーンを頻繁に行っている場合、自社も対抗して値引きすると利益率が下がりROI悪化に繋がります。そういう場合は値下げ競争に巻き込まれない差別化戦略(機能追加や別サービス提供など)を検討し、むやみにROIを落とさないようにする判断も必要でしょう。要するに、競合の動きと自社の収支バランスを常に睨みながら、勝てる領域に資源を投下することが肝要です。この考え方は中小企業において死活問題と言えます。大手と同じ戦場で消耗戦をしていては利益が出ません。競合分析で得た知見をもとに、「低コストで高リターンを生むポイント」に絞って勝負することで、広告のROI最大化を図りましょう。
継続的なモニタリングとPDCA
広告パフォーマンス指標の活用は一度きりではなく、継続的なモニタリングと改善のサイクル(PDCA)が大切です。競合他社も自社も、市場環境や予算状況によって広告戦略を変えていきます。それに伴い、インプレッションシェアやCTR、CVR、CPAといった数値も変動します。定期的にこれらをチェックし、異変やトレンドを察知したら競合の動きを分析して原因を探り、自社の戦略修正に活かす、という流れを回しましょう。
例えば、ある月から急に特定キーワードで自社広告の表示シェアが落ちた場合、競合が新規参入したか大幅に予算増強した可能性があります。すぐに実際の検索結果やオークション分析を確認し、必要なら入札戦略を見直します。また、競合A社が新キャンペーンを打ち出した影響で全体のCTRが下がったなら、自社も対抗策を考える、といった具合です。このようにデータに現れる兆候を逃さず捉え、競合分析と自社施策の改善を繰り返すことで、常に費用対効果の高い広告運用が実現できるのです。
関連記事
中小企業必見:競合広告戦略分析の重要性と成功に導く実践手法に戻る
無料相談のご案内
「とはいえ専門的な分析を自社だけで行うのは難しい」「どこから手を付ければ良いか分からない」と感じる方もいらっしゃるでしょう。そのような場合は、プロの力を借りることも可能です。当社では競合広告戦略の分析や運用改善に関する無料相談を承っております。自社の状況に合わせて競合分析のポイントや、広告戦略立案のアドバイスをさせていただきますので、ぜひお気軽にご利用ください。「もっと競合を活用して成果を上げたい!」という方は、以下のお問い合わせフォームより今すぐご相談ください。