インドアゴルフ業界は近年、コロナ禍によるゴルフブームも追い風に急成長しています。しかし施設数の急増に伴い競合も激しく、「どうやって会員を増やせばよいか」と頭を抱える経営者も多いでしょう。特に、開業したものの想定より会員が集まらず黒字化に苦戦するケースも少なくありません。
集客戦略
そこでまずは、基本となる集客戦略と自社ならではの差別化ポイントを押さえておきましょう。
市場の現状
コロナ禍以降、首都圏を中心に月会費制のインドアゴルフ練習場が急増しています。ブームでゴルフ人口が増えたこと、新規事業として参入する企業が増えたこと、空きテナントの増加などが要因です。一方で施設乱立による過当競争も起きています。
黒字化の鍵
インドアゴルフ経営で利益を出すには、安定した会員数の確保が必要です。一般に1打席あたり約40~50名が適正会員数と言われ、例えば3打席なら120~150名程度が目安です。むやみに集客しても予約が取りにくくなり退会者が増えるため、自施設の規模に見合った会員数を目標にします。
ターゲット設定と差別化の重要性
集客の第一歩は、自社のターゲット顧客を明確にし、そのニーズに合わせて差別化することです。何も考えずに広告やキャンペーンを打っても、誰にも響かない施策になりがちです。まずは「どんなゴルファーに来てほしいのか(初心者か経験者か、若年層かシニアか、男女どちらか等)」を定め、その層にアピールできるポイントを磨きましょう。
差別化の例: 競合ひしめく都市部では大きな差別化は難しいかもしれませんが、小さな違いでも構いません。他社がやっていないサービスを取り入れることで、特定のニーズに刺さる顧客を取り込めます。例えば:
- スイング解析やクラブフィッティングなど、個々の顧客に合わせたレッスンを提供する。
- 練習後にカフェサービス(コーヒーとスイーツ提供)を行い、女性客の固定ファンを増やす試み。
- 小さなお子様連れでも利用しやすいキッズスペースや家族プランを用意し、ファミリー層を取り込む。
こうした工夫によって「この施設ならでは」の強みが生まれれば、価格競争に陥らず自社に合った顧客層を確保しやすくなります。差別化ポイントは大きなものでなくても構いません。小さな違いの積み重ねが評価され、結果として競合との差となって表れるでしょう。
必要な会員数の確保と維持
前述の通り、インドアゴルフでは打席数に応じた適正会員数があります。集客戦略を考える際は、新規入会者の獲得と既存会員の維持の両面から計画を立てましょう。新規会員を増やしつつ、一定数に達したら維持に注力し、退会者が出たら補充する——このサイクル管理が重要です。
特に、開業当初はキャンペーン等で一気に会員を集めても、3ヶ月・6ヶ月後に継続して利用してもらえるかが肝心です。顧客満足度の向上にも常に目を向け、退会率を下げる工夫をしましょう。例えば、無人運営の場合でもスタッフアワー(有人対応時間)を設けて、初心者の不安解消や退会引き止めに努める方法があります。体験見学や入会時にスタッフがいれば、その場で質問対応やクロージングができ、「検討します」と帰られてしまうリスクを減らせます。また退会手続きをネット完結にせず直接対話の機会を作ることで、安易な退会を防ぎ会員継続率を高める効果も期待できます。
基本的な集客チャネルの把握
最後に、自社が活用できる集客チャネルを整理してみましょう。大きく分けて「オンライン(デジタル)」「オフライン(従来型)」の両軸があります。それぞれ利点とコストが異なるため、ターゲット層に合わせて最適な組み合わせを選ぶことが重要です。例えば若年層狙いならSNSやWeb広告、シニア層狙いなら折込チラシや地域紙といったように、媒体の利用者層に合わせて集客策を選ぶべきです。詳しい施策については次章以降で解説しますが、経営者としてオンライン・オフライン双方の手法を理解し、限られた予算と時間を効果的に配分する視点が求められます。
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まとめ
基本戦略として、まず市場環境や自社の立ち位置を把握し、明確なターゲットと差別化ポイントを定めましょう。適正な会員数の目標を念頭に、新規獲得と既存維持のバランスを取った施策が重要です。その上で、オンライン・オフラインの様々な集客チャネルを駆使して、自社に最適な集客プランを構築していきます。競合が増える中でも、自社ならではの強みを打ち出し計画的に集客すれば、安定した会員数の確保につながるでしょう。


