秋田県秋田市在住63歳男性が語る在宅買取テレアポ成功体験【インタビュー】

記事の内容
電話をかける先の向こうに、人の暮らしが見える――。営業電話というと冷たく断られるイメージがあるかもしれない。しかし、その電話をかけ続ける人にもまた、一つの人生がある。秋田県秋田市在住の佐藤進さん(仮名、63歳)は、もともと電話が大の苦手だったにもかかわらず、自宅でテレフォンアポインター(テレアポ)の仕事に挑戦し、見事に成果を出した一人だ。丁寧な話し方で高齢の顧客から感謝され、今では毎週10件前後のアポイントを安定して取得できるまでになった佐藤さん。その成功の裏にはどんな物語があったのか。雪国・秋田ならではのエピソードを交えながら、佐藤さんのインタビューをお届けしよう。
電話が怖かった過去 – 定年後の不安と挑戦への一歩
静かな住宅街にある佐藤さんの自宅を訪ねると、リビングには電話とノートパソコンが整然と置かれ、まるでミニオフィスのようだ。
自宅にパソコンと電話を用意しヘッドセットをつければ、そこが職場になる。在宅テレアポという新しい働き方で、シニア世代も自宅から活躍できる。
佐藤さんは地元秋田市の食品会社に長年勤め、60歳で定年退職した。現役時代は主に工場管理の仕事で、電話で営業をかけるような経験はほとんどなかったという。「実は昔から知らない人に電話するのが苦手で、定年まで電話営業は避けて通ってきました」と佐藤さんは照れくさそうに笑う。退職後しばらくは趣味の家庭菜園を楽しんでいたものの、次第に「このまま社会との関わりがなくなっていくのでは」という不安が募っていった。年金と貯蓄で生活はできても、先行きへの漠然とした心配や、社会に自分の居場所がない孤独感を覚える日々。「もう一度働いてみよう。でも、この年齢でどんな仕事ができるだろう?」と模索する中で、佐藤さんは求人誌やハローワークでシニア向けの仕事を探し始めた。
「清掃や警備の仕事も考えましたが、持病もあり体力面で不安がありました。雪国の秋田で冬場に屋外の仕事を続けるのも正直つらいですから」と振り返る。秋田の冬は厳しく、積雪で車の運転や通勤も大変だ。できれば自宅でできる仕事がいい――そう思い至った佐藤さんは、インターネットで“在宅 ワーク シニア”といったキーワードで検索を始めたという。そこで偶然目に留まったのが「在宅テレアポスタッフ募集、未経験OK・シニア歓迎」という求人情報だった。
在宅テレアポとの出会い – 不要品買取サービスのアポインター募集
その求人は、電話でお客様に連絡をして訪問買取(出張買取)サービスのアポイントを取る在宅テレアポの仕事だった。佐藤さんが見つけた募集要項には「完全在宅・業務委託」「60代活躍中」とあり、自宅にいながら電話で不要品の買取査定の予約を案内する内容だと説明されていた。実際の買取訪問は専門のスタッフが行うため、自分は電話でアポイントを取ることに専念できるという。「営業の電話なんて自分にできるのだろうか」と迷う気持ちは強かったが、「未経験歓迎」「研修あり」「ノルマなし」といった言葉に背中を押された。「電話が苦手な自分でも、家でできる仕事なら挑戦できるかもしれない」と、佐藤さんは思い切って応募フォームを送信したのだった。
書類選考を経て、オンライン面接の日。緊張する佐藤さんに、採用担当者は穏やかな笑顔で「大丈夫ですよ、研修でしっかりサポートしますから」と声をかけてくれたという。「その一言でホッとしました。電話もパソコンも不慣れでしたが、『わからないことがあっても大丈夫』という言葉に救われましたね」と振り返る。
研修とサポートで克服 – 一人じゃない安心感
採用が決まり、佐藤さんはさっそく自宅でのオンライン研修を受け始めた。画面には同じ新人スタッフや担当トレーナーの顔が映し出され、最初は不思議な気持ちだったという。研修では、電話での話し方やトークスクリプトの使い方、サービス内容の基礎知識まで、一から学ぶことができた。「最初は覚えることが多くて戸惑いましたが、サポートスタッフの方が本当に根気強く寄り添って教えてくれたおかげで、少しずつ慣れることができました」と佐藤さんは振り返る。パソコンの電源の入れ方からヘッドセットの使い方まで丁寧に教えてもらい、「機械オンチの自分でもやれそうだ」と自信が湧いたという。
研修後もフォローは手厚かった。在宅ワークは孤独になりがちだが、マネージャーや先輩アポインターがオンライン上で常に相談に乗ってくれる体制があり、チャットで日々小さな悩み事も気軽に共有し合える雰囲気があった。「自宅で一人ですが、『一人で頑張っている感じがしない』ので挫けず続けられましたね」と佐藤さんは微笑む。同じ業務委託で働く全国の仲間たちとも月に一度オンライン懇親会が開かれ、画面越しに同年代の仲間とお茶を飲みながら情報交換する機会もあるという。「自宅に居ながら全国に仲間ができたようで心強いです。誰かとつながっていると思えるだけで安心して頑張れました」と嬉しそうに語った。
丁寧な話し方が生んだ信頼 – 高齢者に寄り添う応対
いよいよ在宅テレアポとして迎えた初出勤の日。朝9時、佐藤さんは居間の一角に構えたデスクでヘッドセットを付け、緊張の面持ちで最初の電話をかけた。用意されたトークスクリプトを貼り付け、何度も練習していたものの、最初のお客様との通話では頭が真っ白になってしまったという。「あ、あの…」と口ごもってしまい、不審がられたのかすぐ電話を切られてしまいました、と苦笑いだ。次の電話でも「間に合ってます」と断られ、初日は結局ひとつもアポイントを取れなかった。電話を切るたびにため息が出て、「やっぱり自分には無理かもしれない…」と落ち込んだ佐藤さん。その夜は悔しさで眠れなかったという。
そんな佐藤さんを救ったのは、一緒に研修を受けた先輩スタッフからのアドバイスだった。成績が伸び悩んでいるとチャットで打ち明けると、ベテランのAさんが「話し方のこのフレーズを変えてみたら?」と親身に教えてくれたのだ。実は佐藤さん、それまでお客様への最後の質問で「ご不要な物はありませんか?」と率直に尋ねていた。Aさんは「押し売りに聞こえないよう、『試しに査定だけでもいかがでしょうか?』って聞いてごらん」と具体的な言い回しを提案してくれた。「お試し感覚で大丈夫ですよ」というニュアンスに変えることで、お客様の心理的なハードルを下げる狙いがあったのだ。
教わった翌日、佐藤さんはさっそくその新フレーズを実践してみた。すると驚くことに、ある高齢の女性のお客様は少し考えたあと「じゃあ、一度お願いしようかしら」と応じてくれたのである。「思わずガッツポーズしそうになるのをこらえて、平静を装いながら丁寧に日時調整をしました」と佐藤さんは当時の喜びを語る。こうして初めてのアポイント獲得に成功したのだ。電話を切った後もしばらく心臓の高鳴りがおさまらず、「やった、本当にできた!」と喉の奥で何度も叫びたくなるような達成感を味わったという。
この初成功を機に、「電話をかける怖さ」が不思議と薄れていったと佐藤さんは言う。「先輩に教わった通りに、お客様に寄り添うような言い回しや丁寧な言葉遣いを意識したら、少しずつ相手の反応が変わってきたんです。」例えば、高齢のお客様にはゆっくり落ち着いた口調で話し、時には相づちを多めに打ちながらお話に耳を傾けるようにした。すると、「あなたのお話の仕方は丁寧で安心するね」と言われることが増えていったのだ。「反応が変わってきた…!」と手応えを感じられる瞬間が増え、自分でも驚きましたと佐藤さんは目を輝かせる。
実際、丁寧で押し付けがましくない佐藤さんの電話応対は、高齢の顧客から上々の評判を得ているという。ある70代の女性は、佐藤さんとの電話で世間話に花が咲き、最後には「話を聞いてくれてありがとうね」と感謝の言葉まで口にしたそうだ。「アポイントを取るだけが仕事ですが、その途中で少し誰かの心の支えになれることもあると知りました」と佐藤さんはしみじみ語る。テレアポの電話は単なるセールスではなく、人と人とをつなぐ「心通わせる」ひとときになり得るのだ。
毎週10件のアポ獲得へ – 続けるほど見えた成果
初アポ獲得からしばらくして、佐藤さんの業績は右肩上がりに伸びていった。最初の頃は「1日に1件取れれば御の字」で、「週に数件取れれば上出来」という状態だったが、研修から数週間も経つ頃には安定してアポイントが取れるようになった。「最近では1日2件、週に10件前後のアポ取得が当たり前になりました」と佐藤さんは笑顔で教えてくれた。コンスタントに成果が出せるようになった理由について佐藤さんは、「無駄だった通勤や移動の時間がゼロになった分、純粋に電話に集中できて生産性が上がったからですね」と自己分析する。かつて営業所に勤めていた頃は、朝から夕方まで外回りしても成果ゼロの日もあったが、今では自宅にいながら毎日複数の成果を出せるようになった。「電話一本でこんなに結果が変わるなんて、自分でも驚いています」とその成長ぶりに自分自身が一番驚いている様子だ。
周囲から見ても佐藤さんの活躍ぶりは顕著だった。同じチームのマネージャーからは「佐藤さんは本当に吸収が早く、あっという間にトップクラスの成果を上げるようになりました」と太鼓判を押されているという。リスト(連絡先)の質が良く、話を聞いてくれる見込み客が多い環境も手伝って、佐藤さんのアポイント獲得件数は前職時代とは比較にならないほど伸びている。「前は1日1件取れるかどうかでしたが、こちらでは1日平均4件が当たり前になりました」という同僚の声もあり、佐藤さん自身も「ここでは年齢を気にせず活躍できるし、本当に新しい世界に来たようです」と実感を込めて語った。
雪国秋田ならではのエピソード – 地域性が織り成す心温まる瞬間
秋田県は全国でも有数の高齢化地域であり、その高齢化率は約40%と日本一だ。秋田市内でも高齢者のみの世帯が全世帯の3割以上を占め、独り暮らしのお年寄りも多い。そんな土地柄もあってか、佐藤さんは「電話越しに感じるもの」があるという。冬のある日、佐藤さんが電話をかけた先は市内の一人暮らしの80代女性だった。外は雪がしんしんと降り積もり、道は凍えている。「こんな寒い日にわざわざ電話くれてありがとうねぇ。外は雪で真っ白でしょう?」と電話口の女性は少し寂しげに笑った。佐藤さんは思わず「本当ですね、今年も雪かきが大変ですね」と相槌を打ち、しばしお互いの冬の暮らしぶりについて話し込んでしまったそうだ。十分ほど世間話に花が咲いた後、「では一度、査定に来てもらおうかしら」とその女性はアポイントに応じてくれた。「電話の途中で秋田の雪の話になったとき、相手の声がぱっと明るくなったのがわかりました。同じ秋田に住む者同士、共通の話題で心の距離がぐっと縮まった気がしましたね」と佐藤さんは微笑む。
秋田の冬は豪雪で有名だが、在宅テレアポの仕事は天候に左右されないのも大きな利点だ。「もう雪道を運転して通勤しなくていいのは本当に助かります。豪雪の日に重い荷物を持って外回り…なんてことももうありません。家の中で安全に働けるという安心感がありますね」と佐藤さんは笑う。在宅だからこそ、天気を気にせず自分のペースで働ける自由さがあるのだ。実際、佐藤さんは勤務時間も自分で調整し、午前中ゆっくり家事を済ませてから2時間架電、午後にまた2~3時間架電するといったスタイルで働いている。「夕方には仕事を終えて晩ご飯の支度に取り掛かれる」のも在宅ならではと佐藤さんは満足げだ。雪深い秋田の冬でも、自宅の中は自分だけの職場。窓の外の銀世界を横目に、佐藤さんは電話越しに今日も誰かと心を通わせている。
テレアポがもたらした自信と自由 – 第二の人生に灯った希望
在宅テレアポの仕事を始めて数か月、佐藤さんの生活には明らかな変化が生まれた。毎朝決まった時間に起きて身支度を整え、デスクに向かう日課ができたことで、「まるで現役に戻ったみたいですよ」と嬉しそうに語る。退職後しばらく感じていた閉塞感や漫然とした日々が嘘のように、生活にハリが出たという。「仕事があるおかげで、今日一日をどう過ごそうかと前向きに考えられるようになりました」。ノートにはお客様との会話メモや反省点がびっしり書き込まれ、電話を切るたびに「もっとこう言えば伝わったかな」「次は頑張ろう」と自分なりに改善を重ねる日々だ。「この歳でも成長できるんだな、と実感できたことが何より大きな収穫でした」と目を潤ませる。
収入の面でも、取れたアポイント数に応じて成果報酬が支払われるため、頑張りがそのまま収入につながるのも励みになった。「先月は成果報酬で妻とちょっと良い食事に出かけました。孫にも『おじいちゃん、まだ働いてるの?すごい!』と驚かれて誇らしかったですね」と笑う。お金以上に、働くことで得られる充実感や自信こそが佐藤さんにとって何にも代え難い宝物だという。「人と話すことが好き」という自分の長所を活かせている喜び、そして「誰かの役に立っている」と思えることが、こんなにも日々を輝かせてくれるのかと自分でも驚いているそうだ。
実は佐藤さん、当初は「テレアポなんて自分には無縁」と感じていた一人だった。それが今では、「電話を通じてでもちゃんと人の役に立てる」と胸を張って言えるまでになった。「業務委託という働き方も、自分の裁量でスケジュールを調整できて本当に気が楽です。体調に合わせて休み休みできますし、会社員時代には考えられなかった自由があります」と、その表情は晴れやかだ。周囲からも「最近の佐藤さん、表情が明るくなったね」と言われるようになり、本人も心身にゆとりを持って働けているのを実感しているという。
最後に、佐藤さんは同じように電話営業に不安を感じているシニア世代へエールを送ってくれた。「最初は誰だって緊張します。でも勇気を出して一歩踏み出せば、新しい世界が開けるはずです。私自身、63歳で未知のテレアポに飛び込みましたが、今では心からチャレンジして良かったと思っています」。電話越しに人と心を通わせる在宅テレアポという仕事は、佐藤さんにとって「天職とまでは言わないまでも、かけがえのないライフワーク」になったそうだ。その穏やかな語り口からは、かつて電話が苦手だった面影は感じられない。
「テレアポとは、心通わせる仕事」。佐藤さんの歩みは、この言葉を体現するものだった。秋田の雪景色の中、自宅から電話で人と人とをつなぐ佐藤さんの姿は、同じように「まだまだ働きたい」と願う多くのシニア世代に希望と安心感を与えてくれるだろう。電話の向こうに広がる新たな人生の物語は、今日も静かに、しかし力強く紡がれている。

