具体的な測定ツールの比較・解説

記事の内容
ページ表示速度を測定するツールはいくつも存在しますが、ここでは特に利用頻度が高いGoogle PageSpeed Insights、GTmetrix、Lighthouseの3つに焦点を当て、それぞれの特徴と使い分けについて解説します。ツールごとの強みを理解し、目的に応じて使い分けることで、より効果的にサイト速度の診断・改善が行えます。
Google PageSpeed Insightsの特徴
Google PageSpeed Insights(ページスピードインサイト)は、最もポピュラーなページ速度測定ツールの一つです。Googleが提供している無料Webサービスであり、計測したいページのURLを入力するだけで、ページのパフォーマンススコアを算出してくれます。主な特徴は以下の通りです。
- スコアリングと評価: モバイルとデスクトップそれぞれについて0〜100のパフォーマンススコアを表示し、ページ速度を評価します。一般にスコア90以上が「高速」、50〜89が「普通」、50未満は「要改善(低速)」と判定され、スコアは色分け(緑・橙・赤)で視覚的にも示されます。
- Core Web Vitalsの計測: PageSpeed Insightsでは、Googleが定めるUX指標であるCore Web Vitalsを中心に分析が行われます。具体的にはLCP(最大コンテンツ描画時間)・FID(初回入力遅延)・CLS(累積レイアウトシフト)などの主要指標でページの実力を測定します。これらの値が「良好」であるかどうかも判定されるため、自社サイトがユーザー体験の基準を満たしているか確認できます。
- 具体的な改善提案: スコア算出と同時に、ページ速度を向上させるための改善項目のリストが提示されます。例えば「画像を適切なサイズに圧縮」「使用していないCSSの削除」「不要なリダイレクトの排除」等、ページごとに異なる改善アドバイスが表示されます。各項目にはどれだけの速度短縮効果が見込めるか概算も示され、優先度の参考になります。
- フィールドデータとラボデータ: PageSpeed Insightsは、実際のユーザーから収集したフィールドデータ(過去28日間の匿名ユーザーデータ)と、Lighthouseによるシミュレーション計測(ラボデータ)の両方を表示します。フィールドデータが十分ある場合は実ユーザー環境での中央値がわかり、ラボデータでは理想環境下での問題点が洗い出せます。これにより、現状のユーザー体験と潜在的な技術的課題の両面を把握できます。
使いどころ
PageSpeed Insightsはサイト全体の健康診断的な位置づけで使うと良いでしょう。特別な設定不要ですぐ結果が得られるため、社内共有資料としても活用しやすいです。まずはPSIでスコアと主な改善ポイントを把握し、その後の詳細調査や対策検討に進むという流れが一般的です。Google公式ツールという信頼性から、経営層への説明やSEOレポートにも説得力のある数字として使えます。

GTmetrixの特徴
GTmetrix(ジーティーメトリックス)は、Web開発者やサイト管理者に広く利用されているページ速度分析サービスです。無料で利用でき、サイトにアクセスしてURLを入力すると分析レポートが生成されます。GTmetrixの特徴を挙げます。
- 総合評価をランク表示: GTmetrixではページのパフォーマンスを総合評価してA~Fのランクで示します(Aが最高でFが最低評価)。スコアの数値ではなくランク表記のため直感的に優劣を把握しやすいです。また、Performanceスコア(%表示)と構造評価など複数の評価軸を持っており、技術面と体感面の両側面から点数化されます。
- 詳細な速度指標の提供: GTmetrixは内部でGoogleのLighthouseエンジンを用いており、LCP・CLS・FCP・TTI(対話可能になるまでの時間)・TBT(総ブロッキング時間)・スピードインデックスなど、詳細なパフォーマンス指標を確認できます。各指標について目標値との差異も表示されるため、どの部分の改善が必要か判断しやすくなっています。
- 「Structure」タブでの分析: GTmetrix独自のStructure(構造)分析では、ページのコードや構成に関する具体的な最適化提案が一覧化されます。例として「適切なサイズの画像を提供する(Serve scaled images)」「小規模なCSSはインライン化する(Inline small CSS)」など、PageSpeed Insightsと類似した指摘もありますが、独自の観点でのアドバイスも含まれます。各項目は重要度順に並んでおり、影響度の高い順に対処できます。
- 滝グラフ(Waterfall)の表示: GTmetrixレポートのハイライトの一つがWaterfallチャートです。これはページ読み込み時に発生する全てのリクエスト(画像、CSS、JS、フォント、XHRなど)の開始タイミングと所要時間を時系列で示したグラフです。一覧を見ることで「どのリソースのせいで待ち時間が長くなっているか」「並行して読み込まれているかシーケンシャルか」などが一目瞭然です。ボトルネックの特定や、外部スクリプト読み込みによる待ち発生などを詳細に分析するのに役立ちます。
- アカウント登録による機能拡張: 無料の会員登録を行うと、テストサーバーのリージョン選択(日本・北米・欧州など)、デバイスや回線速度のシミュレーション設定、そして過去のテスト結果の保存や比較が可能になります。例えばページの改修前後でGTmetrixスコアがどう変わったか履歴を追えるため、改善施策の効果検証に便利です。有料プランではさらに定期的な監視や詳細なレポート機能も提供されています。
使いどころ
GTmetrixは技術的な詳細分析やチューニング確認に向いています。PageSpeed Insightsでは把握しきれない細かなボトルネックを洗い出したり、特定のリソースの最適化効果を測定したりする際に有効です。特にWeb制作会社の担当者や社内のエンジニアと協力して速度改善を行う場合、GTmetrixの具体的なデータは貴重な指針となるでしょう。また、複数地域での速度比較をしたい場合にも、テストサーバーを選択できるGTmetrixは重宝します。

Lighthouseの特徴
Lighthouse(ライトハウス)はGoogleが開発したオープンソースのウェブページ監査ツールで、Chromeブラウザに標準搭載されています。PageSpeed Insightsと混同されがちですが、Lighthouse自体はローカル環境で動作する分析ツールであり、より技術者寄りの使い方をされます。その特徴を見ていきます。
- Chrome DevToolsで利用可能: LighthouseはChromeブラウザの開発者ツール内で使用できます。閲覧中のページ上で右クリック→「検証」を選び、表示されたDevToolsの中にある「Lighthouse」タブから実行します。ネット接続が不要なため、ローカルホスト上の開発サイトやテスト環境でも速度診断が可能です。またChrome拡張機能版やコマンドラインツールとしても提供されており、用途に応じた使い方ができます。
- 多角的な監査項目: Lighthouseは5つの監査カテゴリを持ちます。パフォーマンス、アクセスビリティ、ベストプラクティス、SEO、プログレッシブウェブアプリ(PWA)です。ページ表示速度に直結するのはパフォーマンスカテゴリですが、それ以外にもモバイル対応状況(SEO項目)やアクセシビリティチェックなど包括的なサイト品質評価が可能です。PageSpeed Insightsはパフォーマンスに特化していますが、Lighthouseはより広範なサイトの健全性チェックができる点が異なります。
- オフラインでの詳細分析: Lighthouseは自分のPC上で実行されるため、ネットワーク速度やデバイス性能を自由に指定してテストできます(DevToolsのネットワーク制限機能とデバイスエミュレーションを使用)。これにより、例えば「低速3G環境ではどうか」「ハイスペックPCならどうか」といったシナリオごとの測定が可能です。出力されるレポート内容自体はPageSpeed Insightsのパフォーマンス結果に近く、各種速度指標の値や改善提案が示されます。違いとして、レポート言語はデフォルトでは英語ですが、CLI版をJSON出力して日本語化するなど上級者向けの使い方も存在します。
- PageSpeedとの関係: Lighthouseは前述のとおり、PageSpeed Insightsにもエンジンとして組み込まれています。そのため、同一ページをテストした場合、基本的なパフォーマンススコアや提案内容はPageSpeed Insightsとほぼ共通になります。ただし実行環境が異なるため、ネットワーク状況やデバイス性能の違いから数値に若干の差が出ることがあります(例えば自宅PCのLighthouseテストでは速いが、PageSpeed(Googleサーバー経由)ではやや遅い等)。これは測定条件の差によるもので、両者の優劣ではありません。
使いどころ
Lighthouseは開発・改修の現場での活用に適しています。例えば新たに実装したコードがパフォーマンスに与える影響をその場でチェックしたり、公開前のステージング環境で問題がないか検証したりといった用途です。開発者でなくとも、Chromeブラウザさえあれば使えるため、簡易的にページ速度を確認したい場合に試してみる価値はあります。特に社内や限定公開のページを測定したい場合や、インターネット接続できない環境で速度チェックしたい場合に重宝するでしょう。一方で、純粋にパフォーマンス以外の項目も多く含むため、マーケ担当者が日常的に使うツールというよりは、Web制作担当者やエンジニアとの共同作業フェーズで使う補助ツールと言えます。

ツールごとの使い分け
どの場面でどのツールを使うべきか?
上記3つのツールはいずれもページ表示速度の診断に役立ちますが、それぞれ得意とするところが異なります。最後に、どのような場面でどのツールを使うと効果的かまとめます。
- まず全体把握には「PageSpeed Insights」: サイトの速度状況をざっくり把握し、経営陣やチームに報告するための指標が欲しい場合は、PageSpeed Insightsでスコアと主要指標を確認しましょう。Google公式の評価という信頼性も高く、改善すべきポイントも網羅的に洗い出せます。特に非エンジニアのマーケ担当者にとって扱いやすく、ウェブ上で完結する点で最適です。
- 技術的な詰めや検証には「GTmetrix」: サイト速度の具体的なボトルネックを特定したり、改善施策の効果測定を細かく行いたい場合はGTmetrixが有用です。Waterfallチャートで遅延原因を特定したり、複数回のテスト結果を比較したりといった分析に向いています。たとえば「画像圧縮後に実際どれくらい読み込み時間が短縮したか確認したい」「海外からのアクセス速度を見たい」といったケースで力を発揮します。
- 開発中・非公開環境や多角的監査には「Lighthouse」: 新機能実装中のサイトや公開前のページの速度をチェックする場合、ネットに公開できないことも多いでしょう。その際はローカルで使えるLighthouseが適しています。また、速度以外の項目も含めて総合的にサイト品質を改善したい場合にもLighthouseの各種監査結果が役立ちます。例えば、速度改善と同時にSEOやアクセシビリティのチェックもしたいとき、一度のテストで総合診断できるのはLighthouseならではです。
もちろん、これらのツールは併用も可能です。同じページをそれぞれのツールで測定してみて、共通して指摘されている問題は優先的に対処する、といった使い方をすると抜け漏れが減ります。また、ツールごとに表示形式が違うため、自分が理解しやすいレポートを出してくれるツールを重視するのも一つの方法です。最終的には「ページ速度をいかに改善するか」が目的ですので、その目的達成に役立つのであればどのツールを使っても構いません。自社のリソースや体制に合わせて柔軟に使い分けましょう。
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