在宅テレアポ=儲からない?広まる先入観
「在宅でテレアポをしても儲からない」「きつい割に収入が低い」というイメージを持つ人は少なくありません。実際、在宅テレアポの仕事は平均時給に換算すると1,000円前後に落ち着くことが多く、固定給ではなく成果報酬型が主流なため安定した収入が得にくいとも言われます。テレアポ自体、営業電話の成約率は1~3%程度と低く、大半は断られるため強いメンタルが必要なうえ、高単価の案件は限られているのが現状です。こうした背景から、「在宅テレアポは割に合わない」「儲からない仕事だ」という先入観が広まっているのでしょう。
しかし一方で、「在宅テレアポでも稼げる人は稼げる」という声もあります。事実、在宅テレアポ歴7年以上の経験者によれば、「ビジネススキルや営業センスがある人にとって、在宅テレアポは効率的に収益を得られるモデル」だという指摘もあります。では、在宅テレアポは本当に“儲かる”働き方になり得るのでしょうか? 本記事では、元オフィス勤務のテレアポ担当だった中村さん(仮名、58歳)のビフォーアフター事例を通じて、その疑問に迫ります。中村さんの前職と在宅転身後の働き方・収入を比較し、「在宅テレアポは儲かるのか」を実体験ベースで検証します。
中村さんの前職:オフィス勤務テレアポ時代の働き方
まず中村さん(仮名、58歳)は、在宅ワークへ転身する以前は都内の営業代行会社でテレフォンアポインター(テレアポ)として勤務していました。毎日約1時間かけてオフィスへ通勤し、朝9時から夕方6時過ぎまでひたすら電話で法人顧客へのアポイント獲得業務に従事。月~金のフルタイム勤務で、月収は約25万円(基本給のみ、インセンティブほぼ無し)。昇給も年1回わずかという待遇で、成果を出しても給与にはあまり反映されない環境でした。
仕事の厳しさも相当なもので、電話をかければ当然のようにガチャ切りや断りの連続。長年の経験でこそ慣れてはいたものの、新規リストに架電して断られる精神的ストレスは日常茶飯事でした。「○件アポを取ったら時給アップ」といった明確な報酬アップ策もなく、テレアポ業務の難易度の割に見返りが少ないことに中村さんは次第に不満を抱えていきます。さらに58歳という年齢もあり、満員電車での通勤や長時間勤務による体力的な負担も無視できなくなってきました。
中村さんは「このまま定年までこの働き方でいいのだろうか」と自問するようになります。折しも世間ではコロナ禍を経て在宅勤務が普及しはじめ、営業電話の仕事も在宅でできる求人を見かけるようになっていました。そんな中、「通勤ストレスから解放され、しかも成果次第で収入アップも狙える」在宅テレアポの働き方に興味を持ったのです。
在宅ワークへの転身:転職の理由と感じた変化
中村さんが在宅テレアポへの転身を決意した理由は大きく二つあります。第一に、長年続けてきた通勤中心の働き方から生じる時間的・体力的ロスの解消です。毎日往復2時間の通勤は月に約40時間、年間にすると約480時間にもなります。これは日本人の平均通勤時間(往復約79分)を大きく上回る負担であり、「この時間をもっと有効に使えれば…」という思いが募っていきました。また、通勤に伴う精神的ストレス(満員電車の混雑や遅延イライラなど)から解放されたいという願いもありました。
第二の理由は、自身の営業スキルを活かして収入を伸ばしたいと考えたことです。前職ではいくらアポイントを量産しても給与は固定で頭打ちでしたが、在宅テレアポの求人を調べると「成果次第で収入アップ可能」「高歩合」「経験者優遇」といった文言が目に留まりました。実際、「完全出来高制の場合は頑張り次第で収入アップを見込める」との記述もあり、長年培ったテレアポのノウハウを成果報酬型の環境で試せば、収入面で前職以上を目指せるかもしれないと考えたのです。
とはいえ、在宅で一人で働くことへの不安も当然ありました。オフィスのように同僚と情報交換したり雑談できない孤独感や、自己管理で業務を進める難しさは覚悟する必要があります。また中村さんは会社の看板なしに個人事業主的な立場で働くことにもなるため、収入が不安定にならないかという心配も抱えていました。それでも「やってみなければ何も変わらない」と思い切り、58歳にして在宅テレアポの世界に飛び込んだのです。
実際に在宅勤務が始まると、中村さんの働き方にはさまざまな変化が現れました。まず通勤がゼロになったことで、毎朝の慌ただしさから解放され余裕を持って仕事準備ができます。自宅の一室を簡易的なホームオフィスに整え、ヘッドセットとパソコンをセットアップ。快適な室温や椅子の高さなど自分好みに環境を調整できるため、体の負担も軽減されました。また、昼休憩の時間も自由です。オフィス勤務時代は決められた時間に一斉に休憩を取っていましたが、今では自分のペースで適宜コーヒーブレイクを挟みつつリラックスできます。集中力が切れたら少し散歩に出るなど、自分なりのリズムで働ける点に大きなメリットを感じたと言います。
在宅でテレアポ業務を行うスタッフのイメージ。自宅の書斎やリビングが職場となり、自分だけの快適な環境で仕事ができるのは大きな魅力です。中村さんも「通勤がなくなったおかげで朝はゆったりコーヒーを飲んでから業務開始できるようになった。ストレスが減り集中力が続く」という実感を語っています。在宅勤務では周囲の目を気にせず、小休憩やストレッチを挟みながら電話に臨めるため、心身の余裕が生まれ業務効率も上がったそうです。
もちろん、成果が出なければ収入に直結するプレッシャーは在宅テレアポならではの緊張感としてあります。しかし中村さんの場合、長年のテレアポ経験から「断られてもめげないメンタル」や「アポ獲得のコツ」が身についており、在宅でもその強みを発揮できました。「自分のペースで働けるので精神的なゆとりが生まれ、結果的に電話のトーク内容にも余裕が感じられるようになった」と本人も手応えを感じています。
ビフォーアフター比較:収入・時間・自由度はどう変わったか
では、中村さんのBefore(オフィス勤務時代)とAfter(在宅テレアポ転身後)で、具体的にどのような違いが出たのでしょうか。以下の表に主な項目を比較してみました。
項目 (ビフォー→アフター) | オフィス勤務テレアポ時代 | 在宅テレアポ転身後 |
---|---|---|
月収(平均) | 約25万円(固定給) | 約30万円(成果報酬中心) |
報酬体系 | 固定月給+ボーナス少 | 完全成果報酬(インセンティブ制) |
勤務時間 | 9:00〜18:00(実働8h) ※休憩1h含む | 実働約7〜8h(日毎に柔軟に調整) ※午前・午後に分割勤務も可 |
通勤時間 | 往復約2時間/日(満員電車) | 0時間(通勤ストレスなし) |
通勤費用 | 約20,000円/月(会社支給) | 0円(通勤コストゼロ) |
総労働時間 (勤務+通勤) | 約10時間/日 | 約7〜8時間/日 |
表から分かるとおり、在宅テレアポへ切り替えたことで収入は月ベースで約20%アップし、報酬体系も成果報酬型に変わりました。中村さんの場合、完全出来高制の業務委託契約として働いており、獲得したアポイント件数に応じて報酬が支払われます。そのため月収は波があるものの、平均すると30万円程度を維持できており、前職より手取りは増えています。特筆すべきは時間の使い方で、毎日の通勤2時間がまるまる削減されました。日々の拘束時間ベースでは「会社勤務時代の10時間(勤務+通勤)から在宅では8時間弱」に短縮され、1日あたり約2時間の自由時間が新たに生まれた計算です。これは月に約40時間、年間で480時間もの時間節約に相当します。
時間的なゆとりが増えたことで、中村さんは家族と夕食をとる時間が確保できるようになりました。通勤に費やしていた時間を使って新規顧客リストの下調べをしたり、営業トークのブラッシュアップに充てることも可能です。また、会社から支給されていた通勤手当(約2万円)は在宅では不要になるため、企業規模で見ればコスト削減ですが、働く本人にとっても通勤に伴う出費(仕事用の服装代や外食ランチ代など)の減少で実質的な手取り増につながっています。「在宅勤務になってから無駄遣いが減り、お金が貯まりやすくなった」という声は中村さんだけでなく多くの在宅ワーカーから聞かれます。
一方で、在宅テレアポ転身後も課題がゼロになったわけではありません。常に自宅で一人で働くためオンオフの切り替えが難しく、モチベーション維持に苦労する日もあったといいます。しかし中村さんの場合、適度に生活リズムに組み込んだ散歩や家族との時間がよい息抜きとなり、オフィス時代より精神的な負荷は軽減したとのことです。総じて見れば、在宅ワークへの転身は収入面・時間面・生活面いずれもプラスの効果をもたらしたと言えるでしょう。
「在宅テレアポは儲かる」その根拠と理由
中村さんのケースからも分かるように、在宅テレアポは取り組み方次第で“儲かる”働き方になり得ます。その理由をもう少し掘り下げてみましょう。在宅テレアポで収入アップを実現しやすい主なポイントは以下のとおりです。
成果報酬制で頑張り次第では青天井
固定給と違い、テレアポ業務の多くは成果に応じた報酬体系です。結果を出せば出すほど収入が伸びるため、実力のある人ほど稼げる仕組みと言えます。実際、在宅テレアポでは稼げる人とそうでない人で時給換算に2~3倍以上の差が付く例も珍しくなく、フリーランスで月収80万円以上をキープしている猛者も存在します。つまり自分の頑張りがダイレクトに収入に反映される分、やりがいと稼ぎ甲斐が大きいのです。
通勤ゼロによる時間的メリット
前述のとおり、在宅勤務最大の利点は通勤時間が不要になることです。1日あたり1~2時間、月に数十時間もの時間を新たに生み出せるのは大きなアドバンテージです。この浮いた時間を架電件数の上乗せに充てれば商談機会を増やせますし、逆に休息や趣味の時間に充てて英気を養うことで仕事の効率向上につなげることもできます。さらに自宅で働くことで、職場までの交通費や移動時間中のストレスもゼロになります。心身の余裕が生まれることで結果的にパフォーマンスが上がり、収入向上に好循環をもたらします。
自分の裁量で働ける柔軟性
在宅テレアポでは勤務時間やスケジュールを比較的自由に調整できます。例えば「午前中に2時間、午後に1時間だけ」といった働き方も可能で、自分のリズムに合わせて無理なく働けるのは大きな強みです。オフィス勤務では決まった時間に一律で働く必要がありますが、在宅ならターゲットに電話がつながりやすい時間帯を選んで集中して架電し、それ以外の時間は別の作業や休憩に充てるといった効率的な働き方ができます。成果報酬型ゆえに「アポが取れればしっかり報酬になる」実感も得られ、モチベーション維持につながるとされています。このように自律性が高い働き方は、自身で工夫して成果を出す楽しさもあり、結果的に収入アップに寄与します。
経費削減で手取り増加
在宅で働くことで仕事にまつわる諸経費を削減できる点も見逃せません。通勤定期代やガソリン代はもちろんゼロ、スーツや制服などの被服費もほとんどかかりません。昼食も自炊できるため外食代が浮き、コーヒー一杯にしてもカフェではなく自宅で淹れれば費用は微々たるものです。こうした小さなコストカットの積み重ねが月数万円規模になれば、実質的に可処分所得(手取り)が増えることになります。在宅テレアポで劇的に収入が上がらなくとも、「出費が減ったぶんトータルでは前職よりプラス」というケースは多いのです。家計レベルで見れば「稼ぐ」と「支出を減らす」は同価値ですから、在宅勤務は無駄な出費を抑えて儲けを最大化する手段とも言えるでしょう。
経験と人脈次第で高単価案件も可能
中村さんのように業界経験が豊富な人ほど、有利な条件の案件を見つけやすい傾向があります。営業スキルや実績が認められれば、企業から高単価のテレアポ案件を任されたり、知人の紹介で好条件の仕事を依頼されるチャンスも生まれます。在宅テレアポを副業的に複数掛け持ちする人もおり、自分のキャパシティ内で複数の案件を同時並行して回すことで収入源を分散・拡大することも可能です。例えばBtoB向けのインサイドセールス案件を2~3社分受託し、それぞれから報酬を得るような働き方ができれば、合計の月収を大幅に引き上げることもできます。在宅ワークは地理的制約がないため、能力と時間さえ許せば収入の上限を引き上げられる点も「儲かる」理由の一つと言えるでしょう。
以上のように、在宅テレアポで儲けるためのポイントは「成果報酬を味方につけること」「時間という資源を有効活用すること」「自分で工夫して仕事を最適化すること」に集約されます。裏を返せば、これらが上手くできれば在宅テレアポは十分に儲かる働き方になり得るのです。
専門家の視点:在宅テレアポは誰に向いているか?
専門家コメント
「在宅テレアポは人によって向き不向きがはっきり分かれる仕事です。特に自己管理が得意で、過去に電話営業などの豊富な経験があり、人と話すことに抵抗のない方には非常に向いているでしょう。こうした方々は在宅でも効率的に業務を進められ、高い成果を上げやすい。実際、ビジネスリテラシーや営業センスがある人にとっては在宅テレアポは比較的効率的に稼げるモデルだと言えます。中村さんもまさにこのタイプで、長年のスキルと自己管理力を活かして収入アップを実現しました。一方で、オフィスの規律や同僚の刺激がないとサボってしまう人や、営業未経験で電話越しのコミュニケーションに不安がある人だと、軌道に乗るまで苦労するかもしれません。その場合、最初は短時間から始めて徐々に慣らしたり、企業の研修制度を活用してテレアポのノウハウを身につけることが大切です。
総じて、在宅テレアポで「儲かる」人とは、自律的にコツコツ努力できる人、断られてもめげないタフさを持つ人、そして自身の経験や人脈をフル活用できる人です。そうした素養がある方にとって、在宅テレアポは年齢を問わず挑戦する価値のある働き方でしょう。」
以上の専門家の分析からも分かるように、在宅テレアポは適性を備えた人にとっては十分に儲かる仕事となり得ます。逆に言えば、「稼げるかどうか」は自分次第とも言えるでしょう。中村さんのビフォーアフターの物語は、在宅テレアポへの懐疑的な見方を覆す一例です。固定観念にとらわれず、自分の経験や強みを活かせる環境でチャレンジすることで、収入もライフスタイルも大きく好転し得ることを示しています。在宅テレアポは儲かるのか? —— 結論を言えば、中村さんのケースが示す通り「YES」。適切な努力と工夫次第で、在宅テレアポは決して「儲からない仕事」ではなく、むしろ稼げる可能性を秘めた新しい働き方なのです。今後、副業やシニアの再就職としても注目を集める在宅テレアポ。あなたに合ったスタイルで取り組めば、きっとその真価を実感できるのではないでしょうか。
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